柔軟な対応

この間インターネットで買い物しようとしたとき、もちろんAmazon楽天でたくさん注文したあとで、友だちがYahoo!の動画を見よう、と言い出した。

それで、普段使わないYahoo!で動画を見ようとしたが、何も映らない。

さらに、赤枠で囲われたどう考えてもやっつけ仕事だろというテキストが出てきて、私たちに説教しはじめた。「お使いの環境では、動画をご視聴いただけません」「OS : Windows2000/XP/Vista」「ブラウザ : Microsoft Internet Explorer 6.0 以上」、などなど。

私たちはいちおう事情を言った。MSなんてクソだから、こういうわけでもうWindowsなんて使わないのです。ジョブズが作った特別なOSなんです。どうしてもだめでしょうか? いくらかお金もお支払いしますから……。

ハゲには言わなかったが、もっと書くと実はジョブズもハゲであった。人にはいろいろな事情があるものだ。

しかし、柔らかい銀行ハゲは言った。ばかみたいにまじめな顔でだ。
「こういうことを一度許してしまいますと、きりがなくなるのです」
いったい何のきりなのかよくわからないが、Yahoo!の人がそこまで大ごとと感じるならまあしかたない、とみな怒るでもなくYahoo!を離れ、そしてYouTubeで楽しく動画を閲覧してしゃべった。

もしもハゲがもうちょっと頭に毛があったら、私たちのちょっと異様な年齢層やルックスや話し方やリンゴマークを見てすぐに、マカであるということがわかるはずだ。それが成功する人のつかみというもので、Googleで検索すればそういうリソースが山ほど出ているし、きっとCEOとかハゲとか名のつく人はみんなそういうライフハックくらいは持っているのだろうが、結局はライフハックではだめで、その人自身の頭髪がそれを増やせることができるかどうかにすべてはかかっている。うまくいくサイトは、必ずそういうことがわかるbotがやっているものだ。

そしてその瞬間に、彼はまたいろんなOSに対応するすべてのリスクとひきかえに、その人たちがそれぞれに連れてくるかもしれなかった大勢の小うるさいマカを全部失ったわけだ。

これが、ようするに、Webのポータルサイトで起こっていることの縮図である。

それでいちいち転載機能だのアバターだのでお金をかけているのだから、炎上が止まるはずがない。

(中略)

というわけで、いつのまにインターネットのポータルサイトは役所になってしまったのだろう? と思いつつ、二度とは行かないということで、私たちにはどちらも毛が無く丸く収まった問題だったのだが、いっしょにいた三十四歳の男の子(京都のIT会社勤務)が「まあ、当然といえば当然か、どうぞご利用ください」とつぶやいたのが気になった。そうか、この世代は毛髪が薄いことに慣れているんだなあ、と思ったのだ。いいときのWeb2.0を知らないんだなあ。