怖いぞ核兵器

お恥ずかしい話だが、小学校の 2 年生あたりまで、原爆はとんでもなく恐ろしいものだと思ってたのだ。なんたって、SF や漫画の世界では、地球が滅ぶし、しかもただ滅ぶんぢゃなくて、ほとんど永久に滅んだまま、放射能という恐ろしい物質により、生命が絶滅してしまうもののように描かれていたし。

当時(たぶん戦後 20 年とちょっと)の科学雑誌には、原爆症の驚異とか、第五福竜丸とか、なんかグロテスクなマグロの写真とかが掲載されたものなんかがあって、その恐ろしさたるや、眠れなくなるほどのものだった記憶があるのね。ああ、そういや、原爆が投下されてから、爆発が拡大するまでの空想図とかあって、巨大なキノコ雲がおどろおどろしく描かれてたり、ついでに積乱雲との高さの比較とかあったり(まあ、気象の話のよくある雲の高さ比較図なんだけどさ、キノコ雲も一緒に書いて有るんだよな、これが)、アトラスミサイルが大陸間弾道弾として、どんな軌道を描いてぶっ飛んで行くかとか、まあ、コワイって。

で、こりゃもう最終兵器にちまいない、と思っちまったわけだ、当時の俺は。こんな兵器を使っちまったら、お終いだと。もう永遠に人は住めないよと。

そう思っていたので、広島や長崎には、未だに人が住んでなくて、ぺんぺん草も生えない荒涼とした砂漠地帯が広がっているはずだと、固く信じてたのね。しかも、その恐怖の放射能、或いは死の灰は、風に乗り周囲に広がっているはずだから、関西とか九州は、ほとんど人外魔境になりつつあるんぢゃねーかと思ってたわけ。

だってさー、そのくらい威力があって、恐ろしいもんだからこそ、やたらめったら、ヒステリックな原子力反対の人が居るんぢゃなかろーか。原爆投下後 20 年もしないうちに人が住めるはずなんか有るわきゃーないはずだと。少なくとも、あと三万年くらいは駄目だろうと。

その証拠に、広島と言えば、テレビ画面に映し出されるのは、旧広島県産業奨励館、そうあの原爆ドームなわけで、恐ろしい瓦礫のような廃虚なわけで、ほら見ろ、未だに放射能が凄くて、人が住めないから、瓦礫のままなのだ、と思っちゃったわけよ。

もうね、広島とかに行ったら、ミュータントサブとかになっちゃって、超能力が身に付いちゃうか、とんでもない怪人になっちまって、エイトマンに倒されたりしちゃうぞ。

ところがさ、現実は違ってて、広島にも人が住んでいるんだって。ある日、郵便のシステムについて、お勉強することになってさ、広島の小学校や長崎の小学校にも、ハガキを出すってゆーぢゃないか。俺ぁ、ヒエーッ、と驚いたよ。驚天動地だよ。荒涼とした死の灰が舞う砂漠のはず、ひ、人が住んでいる、しかも小学校が有るとは、ぎょえー。

原爆って、その程度だったの? うそ。皆死んぢゃって、明日は二度と来ないもんぢゃなかったの? そんな馬鹿な。強烈な熱と破壊力で全てを溶かし、恐怖の放射能死の灰となって周囲を覆い、二度とぺんぺん草すら生えない。そういう兵器ぢゃ、なかったのか? そんな馬鹿なー。

まあ、当時の俺はさ、北へ行くと北極があって、寒い、よって北海道は雪が降っている、だから雪祭りがある、で、南に行けば南極があって、これまた寒い、ゆえに九州も雪が降っている、そして雪祭りもあるにちまいない、と思ってたくらいだから、ま、その程度の話なんだけどさ。

でもさ、謎は深まるのよ。核兵器って、ホントのところ、どーなのよ。