はてなブックマークは可視化されたツッコミ

TV の前で、女房がツッコミを入れている。

「馬鹿ぢゃん。実家へ帰ればいいのに」
「だから、外国人は駄目なのよッ」
「あら、コレ安いわー」
東京湾は、ゴジラが出るから危ないわよねぇ」

これらのツッコミは、TV の中の人には届かない。女房は、TV の中の人に向かって、突っ込んでいるわけだけど、そのツッコミが届くように、わざわざ電話したりはしない。TV の中の人はネガティブなツッコミを聞かずに済むわけである。

それでも、日本全国ともなると、わざわざ電話してツッコミを入れ、番組終了時にお詫びと訂正があったりすると、TV の前でガッツポーズして、「勝ったね」と喜ぶ人も皆無では無いから、TV 局の電話は、全然鳴らないというわけでもないんだろうけれど。

扨、はてなブックマークは、TV の前の視聴者のツッコミを可視化したものである、と考えられる。

多くの Web リソースの利用者(ひらたくいうと読者)は、何も言わない。或いは、言わないように見える、沈黙のオーディエンスである。が、よく見ると、オーディエンスは黙っているわけではなくて、聞こえるような声では意見を表明していないだけで、ひそひそと感想を漏らしていたりするわけである。そのひそひそ話を聞こえるようにしたのが、はてなブックマークなわけだ。

沈黙のオーディエンスは、声を大きくしてパフォーマーになることを望んではいないので、舞台に上がって、演者に加わったりはしない。役者ぢゃないし、舞台に上がれば、意見とは関係ない部分で、やれ衣装が駄目だとか演技がなってないとか言われるのが分かっているから、客席でひそひそと感想を呟くのだ。

そのひそひそ話を、他のオーディエンスにも聞けるようにしたのが、はてなブックマークなわけだ。劇が演じられている大ホールではなくて、その隣の小ホールに会場を設け、劇の進行を止めることなく、オーディエンスの囁くようなツッコミを他のオーディエンス達にも公開したのである。

で、聞いてみたら、辛辣な意見や、脅迫、誹謗中傷も混じっている。そらそうである。なんたって、茶の間のツッコミなんだから。規制なんてあるわけない。

しかし、小ホールと言えども、舞台である。舞台に上がったからには、オーディエンスではなく、パフォーマーとなるのである。ブクマユーザは自覚する必要があるのかもしれない。けれども、意識し過ぎて、茶の間のツッコミでなくなるのは淋しい気もする。それでも、下品にならないようにするくらいの気遣いは欲しいところであろう。(カレーを食べてる時にうんこの話をするな、っていうのと同じくらいに)

ところで、沈黙のオーディエンスが、実は辛辣な意見を囁いていたという事実を知って、「ネットイナゴが大繁殖したあッ」と慌てるのは、どうかと思います。落ち着いて、よく囁きを聞いてみるのも、大切かと。その上で、下品過ぎるモノには、苦情を述べるなり、なんらかの手段に訴えるべきでしょう。(下品過ぎるものへの対抗策に、コストがかかり過ぎるという点は、今後のインターネット利用に関する問題を考える上で、大変重要なポイントとなるとは思いますが、それはまた別の話で)

とかなんとか、誰かが既に書いてそうなコトを、既出かどうかなんて調べもせずに書いてみる。こうして、ブログなんてものの S/N 比は悪いほうに転がるばかりになるのである。